Covestroは2026年9月にレバークーゼンでパイロットプラントを開設し、選定した高性能ポリウレタンエラストマーの化学リサイクルをラボ段階からさらに進めた。対象はフォークリフト用ホイール、鉄道緩衝部品、自動車用ジャウンスバンパー、振動制御部品などに使われるVulkollanだ。
このプラントは商業規模のリサイクルエラストマーグレードを確立するものではない。使用済み原料の試験、分離・精製工程の最適化、工業化判断のためのデータ収集が目的で、コベストロはこれを前工業化段階と位置づけている。
プロセス目標は精製されたビルディングブロック
Covestroの手法は、選定した使用済みVulkollanを化学的に分解して再利用可能な精製ビルディングブロックに変換する。回収率は質量ベースで90%以上、炭素フットプリントは化石由来バージン材比で最大3分の2低減できると同社は主張する。これらの数値は選定原料と比較条件に基づくもので、プラント全体の生産ベースラインや完全なLCA境界、商業出荷量は示されていない。
加工業者にとって重要なのは、高い回収率だけでは回収中間体がバージン原料と同等の仕様を満たすとは限らない点だ。パイロットの狙いは異なる廃棄物ストリームを試験し、プロセスを改善し、スケールアップ判断に必要な証拠を揃えることにある。原料組成、汚染、回収品質、精製性能は依然として変数だ。
CovestroはVulkollanが耐荷重ホイールや振動・衝撃を受ける部品など高性能用途向けであるため、特に厳しいと指摘する。リサイクル原料をこれらの用途に使うには、化学変換だけでなく、ビルディングブロックの再現性、配合管理、加工データ、顧客によるバージンまたは既存リサイクルグレードとの適合確認が必要になる。
原料管理も技術の一部
Covestroは顧客、リサイクラー、廃棄物収集業者、物流業者などと協力し、回収・返送システムを構築している。一貫した原料品質と経済的に成立する物流が、将来の循環型バリューチェーンの条件だと同社は見ている。
この要件により、スケールアップの主なリスクは反応器以外にある。使用済みVulkollanを特定・回収し、化学プロセスが受け入れ可能な状態で届ける必要がある。パイロットが選定材料での変換を示しても、商業システムでは量、選別精度、地域カバレッジが不足する可能性がある。次に必要な証拠は、リサイクル収率と定義されたストリーム、操業期間、回収材料仕様のつながりだ。
レバークーゼン設備は、選定した特殊キャストエラストマーや熱可塑性ポリウレタンの循環ルートも探る。コベストロはこれらのルートを完成した商業製品として提示していない。同じパイロット設備で他のエラストマー系を開発できる可能性はあるが、性能や回収率はVulkollanからそのまま移せない。
他の非化石ルートは異なる証拠を示す
Envaliorの2026年9月Fakuma発表は別の仕組みだ。同社は使用済み食用油由来のISCC PLUS認証PPSグレード「Xytron B-MB」を展示し、SECARAと共同で使用済み自動車プラスチック由来の高純度カプロラクタムを将来の循環PA6生産向けに開発中であると紹介した。これらはエンジニアリング材料の例で、リサイクルVulkollanが商業エラストマーグレードとして認定された証拠ではない。
マスバランス原料と化学リサイクルの違いは運用面にある。マスバランスグレードはチェーン・オブ・カストディで代替原料を割り当てる。一方、コベストロのパイロットは指定した使用済みエラストマーストリームから化学ビルディングブロックを回収することを目指す。それぞれに異なる検証が必要だ。
Trelleborgの低炭素EPDM発表も同じ材料シフトに属するが、利用可能な情報では同じリサイクルルートを確立したものではない。炭素フットプリント低減EPDMグレードと化学リサイクルポリウレタンエラストマーは、ポリマー系、投入経路、認定要件が異なる。性能や炭素ベンチマークとして一方を他方に適用するには、対応するデータが必要だ。
認定の関門はまだ先
加工業者や部品購入者にとって、コベストロの今回の発表は「化学リサイクルは技術的に可能か」から「どの測定値がリリース判断を支えるか」へ質問を変える。パイロットは異なる使用済みストリームを一貫して処理でき、回収ビルディングブロックが規定純度を満たし、それで作った材料が用途で必要な性能を保持することを示さなければならない。
発表内容には商業生産キャンペーン、顧客認定、販売量、完成したリサイクルVulkollanグレードの報告はない。パイロット開設、選定材料の回収可能性、化石由来バージン材との炭素フットプリント比較を述べている。これらはメカニズムの説明で、商業エラストマー市場がすでに移行したという主張ではない。
コベストロの次の確認可能関門はパイロットデータパッケージだ。試験した廃棄物ストリーム定義、操業窓、回収ビルディングブロック仕様、再現性結果、顧客トライアル状況。これらの測定値が公表されるまで、レバークーゼン工場は原料と化学の工業試験として読むのが適切で、非化石エラストマーグレードがすでに市場全体で認定された証明とは言えない。
編集部の見解
- 回収したポリウレタンビルディングブロックを厳しい用途に使うには、どんなデータが必要か?
- リサイクル収率だけでなく、回収ビルディングブロックの仕様書を要求せよ。リリースファイルには純度、ロット間再現性、配合挙動、加工データ、該当するバージン材または既存リサイクルグレードとの性能比較を明記する。荷重支持や衝撃を受ける部品を変更する前に、顧客が実際に使う条件での適格性試験を実施すること。よくある誤りは、高い質量回収率を同等品質の証明とみなすことだ。汚染や原料変動、精製不足で、最終エラストマーが承認済み性能範囲から外れる場合がある。
- 使用済みエラストマー原料が商用で使えるかどうかは、どう判断すればいいか?
- 年間トン数だけの原料供給約束は受け入れない。受け入れる材質、汚染限度、選別方法、回収地域、納入頻度、契約期間を明確にし、それらをパイロット生産と結びつける。化学的には処理できても、逆物流が分散していたり量が不安定だったりすると経済的に成り立たない。余剰在庫が添加剤の有効期限を過ぎたり、加工窓から外れたりする可能性もあるため、供給の安定性は「受け入れ可能な原料の継続供給」で測る。
- ポリウレタンエラストマーの結果は、他のエラストマーやTPUグレードにそのまま使えるか?
- 使えない。各ポリマー系ごとに、原料定義、反応試験、精製結果、完成材の適格性評価を個別に実施せよ。パイロット設備は共用できても、回収挙動や性能は類推できない。一部のポリウレタン廃棄物で成立した方法でも、別のエラストマーでは添加剤や架橋構造、汚染物質が異なり、得られるビルディングブロックがその系の配合・加工要求に合わない。
- リサイクル原料を生産試験に使う前に、加工業者は何を文書化すべきか?
- 試験済みの廃棄物流定義、入荷検査方法、パイロット運転窓、回収材仕様、再現性データ、顧客試験の状況を記録する。材料仕様の責任者と変更承認の責任者をそれぞれ1名置き、購買が化学的に似たロットを工程管理者の確認なしに入れ替えないようにする。生産試験では通常のラボ、寸法、耐久性チェックを省略できない。精製中間体は、見かけの組成が問題なくても硬化挙動、粘度、接着性、摩耗性を変えることがある。
- 炭素削減を主張すれば、リサイクルエラストマーを購入してよいか?
- ならない。炭素値は経路ごとの比較値であって、購買仕様ではない。システム境界、化石燃料基準、原料定義、回収根拠、物流前提を求め、それらを技術的適格性ファイルとは別に保管する。計算上のフットプリントが低いだけでは、商用供給の安定性、品質の安定、用途承認は証明されない。輸送距離や精製ロスで結果が変わるほか、マスバランス材の場合は廃棄物由来のビルディングブロック実証ではなく、チェーン・オブ・カストディ記録が必要になる。
出典・参考文献
- 1.Plasticker. News specials. Plasticker.
- 2.World Ports. Trelleborg launches reduced carbon footprint EPDMS. World Ports.
- 3.Envalior. (2026, September 25). Envalior at Fakuma 2026: Smarter and sustainable material solutions for evolving industry needs. Envalior.
- 4.Covestro. (2026, October 2). Toward circular elastomers: Covestro opens pilot plant in Leverkusen. Covestro Press.
- 5.Plastics Engineering. Thermoplastic vulcanizates expand rubber processing options. Plastics Engineering.
- 6.European Rubber Journal. Covestro opens elastomer recycling pilot plant. European Rubber Journal.
- 7.Tire Technology International. Materials. Tire Technology International.
- 8.Vinachem. Tire Technology Expo 2026: Sustainable materials and digital manufacturing take center stage in Hannover. Vinachem.
